コカコーラ、炭酸を飲むと骨や歯が溶ける説 歯科医師が解説 飲み方によっては歯は少しずつ溶かされる危険性も否定できない
よく親からこう言われたことはないだろうか。「コカ・コーラばかり飲んでると骨が溶けるよ」と。子ども心に恐怖をおぼえ、炭酸飲料をあまり口にしなくなった人もいるかもしれない。では、コカ・コーラのような炭酸飲料を飲むと歯や骨が溶けてしまうのだろうか。調べてみると、これは嘘でもあり本当でもあることがわかってきた。
炭酸は歯や骨を溶かす性質を持つ
清涼飲料にはコカ・コーラのように炭酸が入っているものとそうでないものがあるが、歯や骨が溶けるという言説は、炭酸という「酸」によって溶けるのではないかというイメージからきていると考えられる。
炭酸というのは水溶液に溶けた二酸化炭素のことだが、炭酸を含んだ天然の炭酸水もあるように、炭酸は昔から飲まれてきた成分でもある。また、空から降ってくる雨水にも二酸化炭素が溶け込んでいて、石灰岩などの地層に染み込めば地層を溶かし、地下の洞窟に落ちて鍾乳石などを形成するように、炭酸を含んだ水にはカルシウムを溶かす性質がある。
まず、筆者は日本コカ・コーラ株式会社にこの言説の真偽を聴いてみた。この種の疑問や質問は多いようで、同社のホームページ上の「よくあるご質問」にも回答が出ている。
コカ・コーラに限らず一般的に清涼飲料には酸味料が含まれています。そして、歯や骨の成分であるカルシウムやマグネシウムは、酸に溶ける性質を持っています。よって、清涼飲料、果汁などの酸を含む液体に、抜けた歯や魚の骨を長い間つけておくと、含まれるカルシウムやマグネシウムが溶けます。しかし、飲みものですので人間の骨に直接ふれたり、歯に長い間くっついていることはありません。安心してお飲みください。
コカ・コーラを飲むと骨が溶けるのかという冒頭の疑問は、炭酸の弊害をイメージしたと考えられるので、ここからはコカ・コーラなどの炭酸飲料に入っている炭酸の影響について考えてみたい。
各飲料メーカーのQ&Aにある通り、歯や骨を構成するリン酸カルシウムは酸に溶けるのは確かだ。歯の表面をおおう硬いエナメル質はリン酸カルシウムの一種であるハイドロキシアパタイトでできているが、このエナメル質も酸に溶ける。
ダラダラ飲み続けると歯が溶けることも
コカ・コーラなどの炭酸飲料は、口から入って食道や胃などの消化器官から吸収され、やがて汗や尿として排出される。では、入り口である口の中の歯に何か影響を及ぼすのだろうか。甘味料や食品添加物などの歯への影響に詳しい佐藤歯科医院(愛知県大府市)の歯科医師、佐藤太吾氏に話をうかがった。
──炭酸飲料は歯を溶かすことがあるのでしょうか。
佐藤「歯や骨のミネラル分が酸によって溶けてしまう現象を脱灰といいますが、歯の脱灰については飲料のpH(ペーハー、酸性・中性・アルカリ性の指標で7が中性)が大きく影響しています。炭酸飲料だけでなく、乳酸菌飲料やスポーツドリンクはpHが約3~4とかなりの酸性を示し、歯の表面のエナメル質が溶解するpH(臨界点)とされるpH5.5を大きく下回っていて、これが問題になると考えられます。なお、酸による化学的な歯質の溶解を酸蝕症といいます」
佐藤「個人の体質や体調などによって唾液の緩衝能が悪くなり、中和できずにお口の中が長く酸性のままになることがあります。また、炭酸飲料が長くお口の中に停滞するようなダラダラ飲みや唾液が減る就寝前に飲む習慣があったりすれば、歯は少しずつ溶かされてしまう危険性があります」
★抜粋
https://news.yahoo.co.jp/byline/ishidamasahiko/20220126-00278376